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社会保障の歴史
現代の福祉国家では国民の生存権が保障されており、政府が国民の最低限の生活(ナショナル=ミニマム)を保障するしくみがつくられている。そのしくみが社会保障である。
社会保障は、イギリスのエリザベス救貧法(イギリス・1601)から始まり、世界初の公的扶助といわれている。しかしこの時代は、絶対王政の全盛期であり、近代的な公的扶助とはいえなかった。
近代的な社会保障は、1880年代のドイツで、ビスマルクの「あめとむち」の政策により、社会主義者鎮圧法(1878)が制定される一方で、疾病保険法(1883)、労働者災害保険法(1884)、廃疾・養老保険法(1889)といった世界初の社会保険制度が整備された。
1911年には、イギリスで国民保険法が成立し、世界初の失業保険が整備されている。その後、1930年代のアメリカで、F.ルーズベルトのニューディール政策の下で、社会保険と公的扶助を統合した社会保障法(1935)が制定された。
今日「社会保障」という言葉を使うときには、公的扶助と社会保険を組み合わせた総合的な政策のことを指す。この言葉が初めて使われたのはアメリカで、本格的に展開されるのは、イギリスである。
第二次世界大戦後のイギリスでは、ベバリッジ報告(1942)の「ゆりかごから墓場まで」という根本精神に基づいて、1946年に国民保険法や国民保健サービス法が成立し、無料で医療を提供する医療保険をはじめとして、国民に最低限度の生活を保障する社会保障制度が整備された。
社会保障は、各国でさまざまな特徴があり、英・北欧型(イギリス、スウェーデンなど)は、単一の社会保障制度により、全国民の最低限度の生活を保障する平等型タイプであり、公的扶助が中核で、公費負担の割合が大きく、社会保険料は均一というのが特徴である。
一方で、欧州大陸型(フランス、ドイツなど)は、階層ごとに別々の制度に分かれており、所得に応じた保険料負担と社会保険給付を保障する能力型タイプである。社会保険が中核で、財源も保険料中心であり、本人や事業主の保険料でまかなうのが特徴である。
アメリカの社会保障は、公的医療保険制度が存在せず、個人が民間保険会社と契約を結ぶのが一般的であった。しかし、貧困層は保険に加入することができず、結果的に医療サービスを受けられないことが多かった。そこで、2010年にオバマ政権は医療改革をおこない(オバマケア)、貧困層に保険加入の助成金を与えて、国民皆保険となるしくみをつくった。 |
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